《宅建過去問題》平成26年(2014年)問5[債権譲渡]

【H26-05 問題(変更あり)】
預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という)の譲渡に関する次の1から4までの記述のうち、下記判決文(一部変更あり)によれば、正しいものはどれか。

(判決文)
民法は、原則として債権の譲渡性を認め(民法第466条第1項)、預貯金債権については、当事者が反対の意思を表示した場合にはこれを認めない旨定めている(民法第466条の5第1項)ところ、預貯金債権の譲渡性を否定する意思を表示した譲渡禁止の特約は、債務者の利益を保護するために付されるものと解される。そうすると、譲渡禁止の特約に反して預貯金債権を譲渡した債権者は、同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しないのであって、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り、その無効を主張することは許されないと解するのが相当である。

[1] 譲渡禁止の特約が付されている預貯金債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合、債権者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるときに限り、債務者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
[2] 譲渡禁止の特約が付されている預貯金債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合、債権者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば、譲渡した債権者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
[3] 譲渡禁止の特約が付されている預貯金債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば、譲渡した債権者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
[4] 譲渡禁止の特約が付されている預貯金債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合、譲渡禁止の特約は債務者の利益を保護するために付されるものであるので、債権者はいかなるときも当該譲渡が無効であることを主張することは許されない。



 


【H26-05 解答】
債権法改正に伴い、譲渡制限の特約の付いた債権の譲渡は有効となった(民法466条2項)。しかし、譲渡制限の特約の付いた預貯金債権(預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権)の譲渡に限っては、従来と同じく原則無効が維持されている(民法466条の5第1項)。
[1] 誤り
判決文には「譲渡禁止の特約に反して預貯金債権を譲渡した債権者は、・・・債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り、その無効を主張することは許されない」とあるので、債務者に譲渡の無効を主張する意思があるときなどは、債権者による譲渡の無効の主張が許される。判決文は「債務者」を基準としているので、本記述は債権者を基準とする点が誤っている。
[2] 誤り
本記述も債権者を基準とする点が誤っている。
[3] 正しい
本記述は債務者を基準としているので正しい。
[4] 誤り
記述[1]の解説のとおり、債務者に譲渡の無効を主張する意思があるときなどは、債権者は譲渡無効の主張ができる。譲渡無効の主張がいかなるときもできないわけではない。

正解 [3]