【民法改正対応】平成30年(2018年)問9[相殺]

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【H30-09 問題変更あり
Aは、令和2年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
[1] BがAに対して同年12月31日を支払期日とする貸金債権を有している場合には、Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
[2] 同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。
[3] 同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。
[4] BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には、Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。



 


【H30-09 解答】
[1] 誤り
12月1日の時点では、Bの貸金債権(Bから見ると自働債権)が弁済期に達しておらず、相殺適状にあるとはいえないので、Bによる相殺はできない。この場合、Bによる相殺を認めると、Aが有する期限の利益(12月31日まで貸金債務を弁済しなくてよいという利益)を奪うことになるからである。
[2] 誤り

民法511条1項は「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」と規定する。本肢の場合、B(第三債務者)の当該債権は、Aの売買代金債権の差押え後に取得したものなので、Bによる相殺はできない。
[3] 正しい
 ①悪意による不法行為に基づく損害賠償債権、②人の生命または身体の侵害による損害賠償債権(①に掲げるものを除く)のいずれかを受働債権とする相殺はできないのを原則とする(509条本文)。しかし、①②のいずれかの債権を自働債権とする相殺は認められる(最判昭42.11.30)。本肢の場合、Bは②に当てはまる債権を有しているので、これを自働債権とする相殺は認められる。
[4] 誤り
民法508条は「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定する。本肢の場合、Bの貸金債権が時効消滅(9月30日)した後に、Bの売買代金債務が発生(10月1日)しているので、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた」とはいえない。よって、Bによる相殺はできない。

正解 [3]